秋のにぎやかmap 野に山に空に

ANAGA Diary vol.22秋のにぎやかmap 野に山に空に

もし秋の空が、耳を澄ませていれば、それは随分とにぎやかなことだと思います。

広大な丘陵地に広がる、兵庫県立淡路島公園の中も、晴れた青空の下、子供達の歓声が響きます。
『ふわふわドーム』『ローラー滑り台』『水上アスレチック』など、
工夫を凝らした遊具たちは、大勢の子供の笑顔に包まれて生き生きと輝いています。

公園の中をゆっくりと走るトラムカーに乗り、交流ゾーンから森のゾーンに入ると、
今度は木々の間から鳥のさえずりが聞こえてきます。

淡路島には160種を超える野鳥が記録されており、森林が広がる淡路島公園でも一年を通して野鳥の姿がみられます。
年に数回探鳥会も催され、バードウオッチングを楽しむこともできます。

9月23日付、朝日新聞
『青鉛筆』の欄に鳴門海峡の秋の風物詩「タカの渡り」の記事が記載されていました。
タカ科目のサシバやハチクマの群れが越冬のため、東南アジアへと勇壮に飛び去るそうで、
そのピークが24日頃ではないかと記されていました。
時には上昇気流を受け、数十羽が旋回しながら舞い上がる「タカ柱」が見られることもあるそうです。
海の渦潮と空の渦、どちらも魅力に引き込まれますと結ばれていました。
渡り鳥たちは、何を感じとり、何を頼りに、どのようにして美しい隊列を組みながら、旅をするのでしょうか?
小さな体いっぱいに込めた、生きるための覚悟と忍耐、逞しい知恵の結晶に胸を打たれます。

どうか今年も無事目的地に渡り着きますようにと、その姿に願いを重ねます。

身近な野鳥である雀も秋は一段と活発に活動するように思えます。
『稲雀(いなすずめ)』という秋の季語もありますが、
たわわに実った稲の周りをチュンチュンと賑やかに飛ぶ雀の姿を多く見かけます。
一斉に飛び立つその羽音の迫力には、思わず足も止まります。

南あわじ市初尾川ダム近くの道路で、軽やかに飛び歩く鶺鴒(せきれい)に出会いました。

七十二候の一つに鶺鴒鳴(せきれい鳴く 9月12日〜16日)があります。
中国で作られた二十四節気という暦をもとに、更に三つに分けたのが七十二候です。
わずか5日間の季節の移り変わりやその特徴が、端的な美しい言葉で表現されています。
玄鳥去(つばめ去る 9月17日〜21日)や蟄虫培戸(虫かくれて戸をふさぐ
9月28日〜10月2日)など小さな生き物への細やかな眼差しを表現したものも数多く見られます。

 空を見、風や光を感じ、草花や虫の音、鳥のさえずりから、
季節の便りを読み取ることは、とても丁寧な時の過ごし方のように思います。

長月、神無月は月を眺めるのにも最適な季節とされています。
ただ、都会ではなかなか月を愛でるという機会には恵まれないかもしれません。

淡路市岩屋に浮かぶ小さな島、絵島は、古くから月の名所として知られています。

歌人 西行法師は
『千鳥なく 絵島の浦に すむ月を 波にうつして 見る今宵かな』という歌を詠みました。
その歌碑が橋のふもとに建てられています。
平家が福原(神戸市中央区〜兵庫区)の新都に移った平安時代末期(1180年)、
貴族は絵島の月を見ようとして須磨から明石海峡を渡り、歌会を催したそうです。

絵島はまた、波の浸食作用でできた神秘的な岩肌模様でも有名です。
今から約2,000万年前の砂岩層が露出した島で、
地層の中の鉄分が岩の割れ目から出てきて酸化した結果、美しい模様が形成されました。

月は、誰にでも身近なものでありますが、届かない遠い存在でもあります。
ウサギが住んでいたり、かぐや姫が帰っていったりなど、
人は古くから限りない夢を月に抱いてきました。

 エリック・カールの『パパ お月さまとって!』、
音楽では、ドビッシーの『月の光』や、ジャズの『Fly me to the moon』など、
月をモチーフとして創られた作品は数限りなくあります。

短歌の世界では、柿本人麻呂の 
『天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ』
という広大な世界を詠んだ歌があります。

夜空に星を数えながら、月の舟の航路を思い描き、
幻想的なmapを創り上げるというのも、
秋の夜長の楽しみの一つになるのではないでしょうか。