『もういいかい?』『まあだだよ』かくれんぼする秋 この指とーまれ

ANAGA Diary vol.21『もういいかい?』『まあだだよ』かくれんぼする秋 この指とーまれ

晩夏から初秋への移ろいは、ひっそりと緩やかに小さな変化を重ねつつ進みます。

サトウハチロー作詞 中田喜直作曲 童謡『小さい秋見つけた』の歌詞は
『誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが 見つけた
小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた
目隠し鬼さん手のなる方へ・・・』とはじまります。

そして、目隠し鬼さんが、耳を澄ました時、モズの鳴く声で小さい秋を見つけたと続きます。

南あわじ市諭鶴羽ダム公園の林に立つと、
夏の間、溢れるように降り注いでいたクマゼミやミンミンゼミの大合唱が、
随分静かになったことに気付きます。

『シャンシャンシャン  ミーンミーン ジッジッジジジジ・・・』という賑やかな声から、
『ツクツクツク・・・ボーシ ツクツクボーシ・・・』や『カナカナカナ・・・』という
哀愁を感じさせるヒグラシの声へとその主流が変わりました。

木陰では、秋の虫達の透き通ったやわらかな羽音が聞こえるようになりました。

『小さい秋見つけた』三番には
『ハゼの葉 赤くて 入り日色 
小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた』

という歌詞があります。
サトウハチローは、庭のハゼの木の紅葉を見つけて、
得も言われぬ秋を感じ、この詞を作ったとも言われます。
淡路島でもハゼの木の葉の紅葉一番乗りを見ることができます。

少しずつ緑の色調が変わってきた葉に隠れるように、枝の間には、
ドングリやアケビなど幾種類もの実が顔をのぞかせはじめました。
地を覆い尽くすほど逞しかった樹々の成長ぶりにも、少しとまどいの様子がみられます。

洲本市鮎屋の滝から流れ落ちる水面に反射する陽の光も、随分まろやかになりました。

木陰を渡る風に木の葉が一枚一枚舞い落ち、
空気が掃き清められるように静寂さを増していきます。

隠れん坊をしながらも、秋は少しずつその姿を現してきています。

淡路市、北淡市の道路脇には、イチジクやブドウ畑が続きます。
旬の時を迎え、その果実は甘く大きく熟しています。

洲本市五色町で始まったとされるイチジクの栽培は、
近年、島内でめざましく拡大しています。
日照時間が長いなど、多くの気象条件にも恵まれ、
糖度の高い甘く大きな果実がその特徴です。

あぜ道を飛ぶ赤とんぼの傍らでは、稲穂がたわわに実り、収穫を待つばかりになりました。

まもなく稲刈りが始まり、秋祭りが幕を開けます。

100を超える神社がある淡路島では、
豊作や豊漁、漁の安全などを祈願して季節に合わせて数多くの神事が執り行われてきました。

洲本市五色町鳥飼の鳥飼八幡宮では、毎年10月第三日曜日に秋の例大祭が開かれます。
鳥飼八幡宮は、平安時代に、京都の石清水八幡宮の別宮として創建されたと伝えられています。
本殿は桃山時代1603年に再興された淡路島で最古の建築遺構でもあります。

その神社で繰り広げられる秋祭りは、200年を超える伝統があり、
舟飾りと呼ばれる褌姿の若者達を乗せた2基の舟檀尻(だんじり)が、
浜への2キロの道を練り歩きます。境内に続く13段の急な石段を上り下りするその姿は、
祭りの花形であり、実に勇壮なものです。

泉州、播磨、淡路島周辺で見られるふとん檀尻(ふとん太鼓)と呼ばれる
真っ赤な正方形の布団を5枚重ねた檀尻も賑やかな太鼓の響きと共に祭りを盛り上げます。

威勢のいい掛け声と共に、祭囃子に鼓動を重ね、
心躍らせるのも味わい深い秋の美味の一つのようにも思います。
御食国淡路島の実りの秋は更に続きます。


そーれ!秋だ!祭りだ!わっしょい!わっしょい!