
ANAGA Diary vol.18緑の祭りたけなわ 遠くに祭囃子を聴きながら
みどりのそよ風 いい日だね ちょうちょもひらひら
豆の花 七色畑に 妹の つまみ菜摘む手が かわいいな
緑の風は、それだけでいい日であり、胸いっぱいのご馳走でもあります。
幾千万の数をもってしても数えきれない程の緑、また緑。
青葉、緑滴る、万緑などそれらに贈られる言葉はたくさんありますが、
目の前の緑は、そのどれよりも遥かに美しく染み入ります。
高村光太郎の『新緑の頃』という詩の中に
青葉若葉に野山のかげろふ時、ああ植物は清いと思ふ。
植物はもう一度少年となり少女となり 5月、6月の日本列島は
隅から隅まで 濡れ出たような緑のお祭り・・・
という一節があります。
逞しく健やかで、眩しいほどの生命力に満ちています。
耳を澄ませば、その若い木々の鼓動が、祭囃子のように山全体に響いています。
風に揺らぐ木々の緑は、神輿のように、ユッサユッサと山を練り歩きます。
木漏れ日が通り過ぎれば、木の葉が透き通り、その葉陰が揺れる様子は、万華鏡のようにクルクル変わります。
別名、花の島ともよばれる淡路島では、『淡路島くにうみ協会』が、
花の見どころを『淡路花の札所』として現在70箇所を指定しています。
第十四番札所の淡路景観園芸学校アルファガーデンでは、
千種を超える樹木や草花が植栽され、今その多くが開花の時期を迎えています。




少し俯きがちに咲く、その清楚で気品のある花は、森の貴婦人とも呼ばれ、辺りに甘い香りを漂わせています。
真っ白なたまごのような蕾が、葉の間から可憐に顔をのぞかせます。
一面の緑の中に過ぎ行く春を惜しむかのようにひっそりと咲いています。


淡路市大谷の山中では、真っ白な鳴門オレンジの花が咲き誇り、たわわに実った実と相まって、
あたり一面に何とも芳しい甘い香りを漂わせています。
柑橘類では数少ない原生種で、淡路島にだけ栽培されています。
蜂須賀家の家臣、陶山氏が橙の中でも特に美味しい実の木を自宅で密かに育てていたのが始まりだとされています。
近年、鳴門オレンジの栽培面積は激減していますが、その独特の芳香と少しのほろ苦さが、
味に奥行きのある果実として再び注目され、貴重な存在となっています。
香りを活かしたピールやポン酢、ドレッシング、ジャムとしても珍重されています。
少し小首をかしげて、天を見つめているようにもみえました。
雨を心待ちにしているのでしょうか。
傍らでは、ツユクサが、梅雨の近いことを教えています。
花と緑とオレンジと、それぞれの香りをのせた初夏の風が心地よく身体を吹き抜けていきます。
淡路島の若き緑は、ほんの少しやわらかくしなやかな様に思います。
みどりのそよ風 いい日だね。