雪中花 水仙 の香りを求めて

ANAGA Diary vol.04雪中花 水仙 の香りを求めて

『仙人は天にあるを天仙 地にあるを地仙 水にあるを水仙という』
水仙という名はこう記された中国の古典に由来するとも言われます。
その可憐な姿から仙人を結び付けるというのは、いささか難しいような気もしますが、
     未だ寒風残る中、俯きがちに白い花をすくっと咲かせるその姿には、
神々しいという表現も、強ち遠いものではないように思えます。

淡路島には少しだけ早く春がやってきます。
どことなく丸みを帯びた山々や穏やかな海、やわらかな日差し、軒先に彩りを添える折々の花。
植林が少ないせいか、丸みを帯びた常緑樹が多く、木の葉の間を吹き抜ける風はやさしく四季を語ります。
もし春が恐る恐るはじめの一歩を踏み出すとすれば、おそらくこんな地を選ぶのではないでしょうか。

淡路島の南端、南あわじ市灘黒岩にも日本三大群生地に入る水仙郷があります。
標高608m諭鶴羽山系から海を臨む45度の傾斜地に、例年野生の水仙が群生します。
青い海を眼前に、白い花が風に揺れる姿は、初春を飾る1ページとして毎年多くの人を楽しませてくれます。
   しかし、今年は115年ぶりに奄美大島に雪が降るなど、大寒波が押し寄せ、全国に様々な被害をもたらしました。
灘黒岩水仙郷もたくさんの水仙が雪の重さで倒れたと聞きました。
しかし、その試練を乗り越え花開かせた水仙達が群生という表現からは遠くても、
辺り一面に清々しく甘い香りを漂わせています。

 寒さに負けず咲くその清楚な姿と甘い香りは、古くから多くの人を魅了し、水仙に寄せてたくさんの句も詠まれています。

其のにほひ 桃より白し水仙花     松尾芭蕉
初雪や水仙の葉のたわむまで      松尾芭蕉
水仙の香やこぼれても雪の上      加賀千代女

 また、海外では、ワーズワースの黄水仙『The Daffodils』が、長く厳しい冬の後に訪れる春の喜びを描いています。

I wandered lonely as a cloud
That floats on high o'er vales and hills,
When all at once I saw a crowd,
A host, of golden daffodils;
Beside the lake, beneath the trees,
Fluttering and dancing in the breeze.

 まさに『冬来りなば春遠からじ』真っ只中です。
節分、そしてその翌日には立春を迎えます。
立春とは、文字通り春が立つということで、立つとは活動を開始することだそうです。

 万葉の時代より朝廷に様々な食材を納めてきた御食国(みけつくに)淡路島にも、もう直ぐ春の美味達が次々に届きます。
 節分には、たくさんの福豆をまきました。小さな春を見つけに、そして口福を求めてどうぞ淡路島にお立ち寄りくださいませ。