天の恵み燦々と収穫への感謝幾重にも

ANAGA Diary vol.12天の恵み燦々と収穫への感謝幾重にも

樹々が少しずつ色づきはじめ、季節の歩みを教えてくれます。
ひんやりとした折々の風が、冬支度をと囁きながら通り過ぎて行きます。

旧暦でいえば、11月は霜月。
霜が降り始める頃を意味します。
地表温度が氷点下になるのは、まだ随分先のこととなりますが、
木の葉を落とし始めた樹々からは、近づく冬の姿が垣間見られます。

新芽を出し、花開き、実を結ぶ、という自然界の営みは、さらに次の世代へと受け継がれて行きます。
新しい生命への繋ぎという大切な仕事を、今静かに成し遂げつつあります。
シイや樫の木の下には、ふっくらとしたどんぐりがコロコロと落ちています。
赤いススキの花穂もすっかり白くなりました。
種子は秋風にのって次々に旅立っていきます。

稲刈りも終盤を迎えました。

田では、規則正しく並んだ稲株が満足そうに並んでいます。
稲架かけ(はざかけ)という伝統的な稲穂の天日干しも見られます。
どっしりと田んぼに腰を据えたその姿には、生産者と共に豊かな実りを勝ち得た稲の高らかな誇りを感じます。

コンバインによる稲刈りが多い昨今、
手間暇をかけて天日干しされた米は、品質も数段上がり栄養価、甘み共にぐんと増すそうです。

淡路島では、その恵まれた自然環境の中にあって、
さらに優れた農産物の育成を目指して、今、さまざまな取り組みが行われています。

全国から注目される、『食のブランド「淡路島」』は、
生産者の顔が見え、安心、安全そして何よりおいしいことを目指しています。

カラフルな人参達もその仲間です。
青々とした葉をみれば、如何に健やかな環境の中ですくすくと育っているかがわかります。

たとえば紫色のパープルスティックは糖度が10〜13度、
且つポリフェノールも普通の人参の約10倍、ビタミンCは3倍と栄養価も抜群です。

他にも白いスノースティック、
イエロースティック、
オレンジスティックと
味覚、色彩で楽しませてくれます。

鶏卵も淡路島の誇るべき食材のひとつです。
清潔に丁寧に育てられた元気な鶏からは見事な卵が生まれます。

錦秋の世界がもうすぐそこに拡がります。

今、その前奏曲を一面に咲くコスモスがうたっています。
風を伴奏に可憐にゆれるコスモスのやわらかなうねりが秋を静かに祝います。

Kosmos ギリシャ語では「秩序」や「調和」を意味し、
秩序だって統一していることから「世界」「宇宙」にも繋がります。

花をよくよく見れば、8枚に見える花びらの内に、
星型に開いた花弁がぎっしりと集まっているのがわかります。

その神秘的な広がりに当に小さな宇宙を実感します。

『灯 消えんとして光を増す』 と言われます。
まもなくあかりを落とす自然界にあって真っ赤に染まる蔦紅葉(つたもみじ)もまた、華やかな輝きを添えています。

黄葉紅葉、桜紅葉、草紅葉、柿紅葉、夕紅葉など、
紅葉の美しさに魅せられて人はたくさんの言葉を残してきました。



刻一刻と艶やかに変貌する秋色に浸りながら、静謐な一日、豊穣への感謝に思いを馳せるのはいかがでしょうか。
心の中にも小さな種が舞い降りるかもしれません。

まもなく冬の眠りにつく生き物達は、その鼓動が少しずつ緩やかになります。
その眠りが満ち足りて安らかであるようにと、
木の葉は一片一片落ちていく様にも思えます。