
ANAGA Diary vol.08初夏の淡路島 緑と光と風の三重奏 ~アンサンブルの妙に心揺れて~
その山道を辿ると、季節が奏でるさまざまなハーモニーに出会います。
満開の後のソメイヨシノには、小さな赤い実が付点音符のように寄り添っています。
緑の重なりが、陽射しの道に繊細なグラデーションを廻らせ、吹く風には軽快な曲調が感じられます。


連なる楽譜のようでもあり、緑の奥へ奥へと音色を誘い、紡ぎ上げてゆきます。


連なる楽譜のようでもあり、緑の奥へ奥へと音色を誘い、紡ぎ上げてゆきます。
クルクルとワルツを踊っているようでもあり、季節の宴がたけなわであることを教えてくれます。
小さな打楽器が小刻みに打ち鳴らされ、優雅な舞曲が聴こえてきます。
そそり立つ奇岩への驚きと畏怖の気持ちがさまざまな伝説を残しました。
日本には国生み神話がいくつかありますが、この沼島もその有力な候補地です。
古事記には『天の浮橋に立ち 沼矛を指し下ろして 流れ漂う海を 泥の混じる塩を、
許袁呂許袁呂とかきまぜて引き上げたところ、
その先より垂落る塩 累積もりて島となる・・・』とあります。
大海原を背景に大小さまざまな泡がリズミカルな響きを添える中、
沼矛でかき混ぜたコオロコオロという音はどれほど壮大なものだったでしょう。
上立神岩には、天の御柱や竜宮城の表門などの伝説も残ります。
神秘的な交響曲がいくつも浮かんでいたのではないでしょうか。
頭を垂れたカラス麦の穂もシャカシャカ賑やかにリズムを刻み、実りの祝歌を唄います。


下を向く蕾と天を仰ぐ花、雲間を交差する光の綾は変化に富み吹き抜ける風がその歌声を天まで届けそうにも思えます。
それは、フィンランドのマリメッコ社のウニッコシリーズで今もなお、世界の人気を集めています。
陽気で華やかなヒナゲシの花は、初夏とは最高のアンサンブルを醸し出しているのかもしれません。
その日その時だけのアンサンブル。
それを心ゆくまで味わうのも、
爽やかなこの季節ならではの愉しみなのではないでしょうか。