
ANAGA Diary vol.11あちらこちらから聞こえて来る、虫の声が聞こえ始めました
羽を擦り合わせて奏でるその音色は、繊細でどこか寂しさも伴い、秋の深まりに趣を添えてくれます。
少しずつ夜も長くなり、十五夜、お月見、長月、神無月と『月』に関わる言葉もこの季節は数多く見られます。
気象的にも夏から秋にかけては空も透明度を増し、月が高く美しく見えるからなのかもしれません。
お月見は古来、五穀豊穣への祈りと感謝を捧げる祭りです。
真偽に諸説があるものの、大航海時代、東方見聞録の中で、
日本がジパング(黄金の国)と呼ばれていたことにも、どこか頷ける気もします。
特に北部の方は平地が少なく、棚田が多く見られます。
高さが異なることから、微妙な色合いの重なりがあり、
またそのやわらかな曲線も相まって、日本の原風景の一つでもあります。
棚田は、田植え前と稲穂の実る頃が際立って美しいといわれます。
機械化の進む大規模農法とは異なり、はるか古代から、
どれほど多くの困難や苦労の果てに、この実りがあるのでしょう。
過酷な環境の中、知恵と勤勉さで築き上げた姿に改めて心を打たれます。
五斗長垣内遺跡(ごっさかいといせき)があります。
弥生時代後期(1〜2世紀頃)に鉄器作りを行っていたとされる貴重な遺跡です。
発見された23棟の内12棟が鍛冶工房建物であり、
鉄が貴重品であった時代に100年以上も続いたそうです。
標高100mを超える山の上に突然出現し、
邪馬台国や卑弥呼の出現する古墳時代には忽然とその姿を消したといわれます。
今なお謎が多く、古代への夢が膨らむ地でもあります。


今から遡ること1800年ほどの前の時代です。
邪馬台国に畿内説と北九州説があるように、誰も見たことのない世界、
まだまだ調査研究を重ねなければ真実はわかりません。
ただ、如何に古代人が知恵を絞り、自然と折り合い、
どんな暮らしを繰り広げていたのかに想いを馳せることは、
日々を離れ悠久の世界に遊ぶきっかけになるのでないでしょうか。
稲刈りの後、その姿が稲穂に似ていることから、お月見にススキが供えられたといわれます。
ススキの花穂は初め赤っぽい色をしていますが、その種子に白い毛が生えると穂全体が白っぽく変わります。
風になびくその白銀の姿は幻想的でもあり、秋の深まりの中、別天地へと誘っている様にも見えます。


栗、レモン、みかん、いちじく・・・
今年は生り年だとかで、収穫を待ち望んでいる様子にも活気があふれます。






一年中でもっとも脂ののった鯛が美味しい季節だともいわれます。
カワハギや伊勢エビも旬を迎えます。
畑では、サツマイモ、サトイモ、玉ねぎなど、
体にやさしい秋の野菜がずっしりと大きく育っています。
秋の夜長、虫の音に耳を澄ませ御食国(みけつくに)の宴に興じるのも佳し、
瀬戸内海を一望できる地で古代を夢想するのもまた、
素敵な秋の過ごし方ではないでしょうか。