心和む初秋の表情

ANAGA Diary vol.01心和む初秋の表情

~心和む初秋の表情~

~『異常気象』この夏何度耳にした言葉でしょう。
四季折々の風情が、少しずつ遠ざかっていくようで、寂寞たる思いに駆られます。
それでも変わらずにいてくれる、そんな淡路島の、心和む初秋の表情をご紹介したいと思います~

夏を彩る花々は、厳しい夏の日差しをはね返すかの様に、たくましく天に向かって咲いています。

『キョウチクトウの花』

『ハイビスカスの花』

白い雲、真っ青な空、そこに映える色を知っているかのように、夏に咲く花は、鮮やかな色彩をもつものが目立ちます。
そんな花達の間を飛び交う、チョウチョや花アブ。
暑さをものともしない、小さいけれど力強い羽音。そのパワーの源は、いったいどこにあるのでしょうか?

『ちょっと拝借』

『うーん!満足!』

『軽やかに軽やかに』

涼やかに飛ぶトンボの姿が、一足早く秋を教えてくれます。

そんな虫達を目で追いながら通りを歩いていると、海藻を洗っておられるご夫婦に出会いました。
いぎすという海藻で、昔から伝わる郷土料理をつくられるとか。

『いぎす』

『いぎす豆腐』をご存知ですか? 瀬戸内地方に伝わる郷土料理で、紅藻に属する海藻いぎすを、大豆粉や米糠と共に煮とかし固めた食品の名称です。いぎすの収穫量が、年々減少し、その価格が高騰していることや、その調理に大変な手間ひまがかかることから、近年作る人は減っているようです。 海岸に打ち上げられた後のいぎすには、あまりにも、たくさんのゴミが付着するため、海中のものを、長い竿の先ですくいとって収穫するとのこと。それを何度も水洗いし、その都度、脱水を行い(5回〜10回程度)小さなゴミまで丁寧にとり除くそうです。そして再び水につけて戻した後、大豆粉などと共に煮て固めるのだそうです。

『いぎす』

『水洗いと脱水』

試食させて頂いた、いぎす豆腐からは、ほんのりと海藻の香りが漂い、酢みそであえるとさっぱりとした夏の味がしました。 今や市場には、インスタント食品やレトルト食品も溢れ、調理にかけられる時間は極端に短縮されました。住まいのすぐ近くにあるものを、自らの手で採集し、大切に時間をかけて調理する、こんな食生活は、もはや希有なものになってしまったのではないでしょうか。 淡路島では、このいぎす豆腐をお盆の際に、ご先祖さまにお供えする風習も残っているとのことです。禅宗で、お盆の供養とは、仏さまやご先祖さまを、尊び供養するだけではなく、日頃お世話になったすべての人、ものに感謝することでもあるとされています。まごころのこもった手作りの郷土料理で感謝の気持ちをささげる、それはとても尊いことのように思われました。 畑に目をやると、何ともたくましい里芋の茎と葉。傍らには、黒ヒエの一種、パープルマジェスティの穂が、空を刺す槍のように群生しています。自然は、たくましく夏をもてなしています。もしかしたら、私達、人間だけが、何か大切なものを自ら無くし、しかも、そのことに気付かず、代わるものを、ただただ追い求めているような気もします。

『水洗いと脱水』

『里芋畑』

『パープルマジャスティ』
淡路島 生穂地区で収穫された、健康優良児の野菜達です。

『無農薬でもこんなに元気に育ちました』

すべての人、ものに感謝

『泥の中でも、美しい花を咲かせる睡蓮』

エジプトでは、ナイル川に咲く聖なる花ともいわれています。
『秋来ぬと目にはさやかに見えねども、風の音にぞ驚かれぬる』
心静かに、耳を澄ませば、変わらず、あきらめず、人類に寄り添い続けてくれる自然の声が、聞こえてくるような気がします。