散る花びらに思いを寄せて 淡路みち

ANAGA Diary vol.07散る花びらに思いを寄せて 淡路みち

「枯れ木に花を咲かせましょう」こう言いながら灰を撒いて、たちまちのうちに桜を咲かせた花咲か爺さん。
きっと今年もみごとに灰を撒いたのでしょう。
儚くやわらかな薄桃色の世界は、たくさんの人の心を魅了しました。
またその散り際はあまりにも潔く、平安の昔人さながら、
もののあはれにしみじみと思いを馳せる機会でもありました。

 世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
 散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか久しかるべき

 時を超えて、桜が伝え続けるものは、どれほど日々の暮らしに彩りを添えてくれることでしょう。
淡路島の桜は、萌黄色に芽吹く山肌に、雪洞のように灯ります。
薄桃色のわた雲のようでもあり、駆け上る春の道標にも見えます。
散る花びらに思いを寄せて、淡路島のみちを辿りました。

 司馬遼太郎氏の『街道をゆく』 明石海峡と淡路みち に洲本城について述べた章があります。

『二つの洲本城』
 大坂城の出城(砦)として、500年ほど前に三熊山一帯に築城されました。
山城とその麓に平城を有するという、大変珍しい形態を残しています。
戦国の世を、安宅氏➡︎仙石氏➡︎脇坂氏➡︎蜂須賀氏と城主を変えながら、栄枯盛衰、時代の移ろいを眺めてきました。
堂々とした本丸への大石段。
どれだけ多くの武将が上ったことでしょう。

 苔むした石垣の傍に咲く桜は、何を見、何を憶ってきたのでしょう。
ちょうど今、NHK大河ドラマでは、同じく大坂城の出城であった真田丸が放映されています。
その真田丸とは異なり歴史の表舞台に立つことはなかったものの、
城は戦国武将にとって、知恵と策略の結晶であったといえます。
計算され尽くした機能美とその緊張感あふれる佇まい。
石垣のみを残す今でさえ、長く時代を経たもののみが持つ威風堂々とした風格が漂います。

樹の根を残す石垣もあり、思いがけず可憐なすみれが顔を覗かせたりしています。
遠い昔も、戦さや権謀術策に疲れた心をどんなにか慰めたことでしょう。

シダの新芽、青々とした苔やツタは、新緑の走りでもあります。
次に萌え出る命の鼓動に耳を傾け、先を託しながら桜は吹雪となってバトンを繋いできたのではないでしょうか。

城を後にして、山を下り北へ向かうとゆったりと田園風景が広がります。
ギャルリBANYAが見えてきます。

アーチをくぐると色とりどりの草花が目を楽しませてくれます。
桜の下にはお茶の準備が整えられていました。
身の回りにある素材を使った、おだやかで温もりに溢れた作品が次々に出迎えてくれます。
ご家族がそれぞれに創作された作品は、見事に調和し小さなコスモスを築いています。

物想いにふける山羊

優しい言葉で語りかけるリャマ

庭先で卵を抱く鶏

小鳥たちは歌いながら、訪れる蝶々やハナアブを迎えます。

眺める桜は一際優しい表情を浮かべているように思えました。

季節は早や、立夏、新緑のまぶしい季節へと移ります。
広葉樹の多い淡路島では、自然が描く『緑』の膨大な色数に圧倒されます。
土筆がどっさり採れました。季節はいろんな置き土産を残しながら去っていきます。
淡路島でそんな置き土産を見つけるのも、また一興かと存じます。
輝く緑に浸りながら、心の隅々にまで爽やかな風をいっぱいに満たして下さいませ。