春の童謡を訪ねて 淡路島

ANAGA Diary vol.06春の童謡を訪ねて 淡路島

『どこかで春が』  作詞:百田宗治 作曲:草川 信
どこかで春が生まれてる
どこかで水が流れ出す
どこかで雲雀が鳴いている
どこかで芽の出る音がする
山の三月 そよ風吹いて
どこかで春が生まれてる

 『夕焼小焼』や『ゆりかごの歌』など、大正時代にはたくさんの優れた童謡が作られました。
どこかで春が生まれてるという発想や、芽の出る音という感覚は、
今を生きる私たちにとって遠いものになってしまったのかもしれません。

けれども、春一色に染まった南あわじ市イングランドの丘で出会った小動物の表情には、
ふと懐かしい童謡の世界を呼び起こしてくれるものがありました。

「ヒクヒク あっ!春のにおい!」

「今、何か音がしたよ!」

プレイリードッグやワラビーが、そう語りかけてくれた様に思いました。

『芽の出る音』があるとすれば、いったいどんな音なのでしょうか?
やわらかな日差しに包まれて、耳を澄ませば新芽がぐっと背伸びをする音や、
ぷくぷくと泡の様に生まれる春の音が聞こえてくる様な気がします。

少し首をかしげたこの鳥も、ちょうど今何か聞こえたのかもしれません。

すぐそばで、ハクモクレンの新芽たちが、天に向かってたくましく行進をしている真最中でしたから。

花畑ではチューリップの花が満開です。

『チューリップ』  作詞:近藤宮子 作曲:井上武士
咲いた咲いたチューリップの花が
並んだ並んだ赤白黄色
どの花みてもきれいだな

『おはながわらった』  作詞:保富康午 作曲:湯山 昭
おはながわらった
おはながわらった
おはながわらった
みんなわらった
いちどにわらった

 どの花も楽しくて仕方が無い様に笑っています。
春を迎えた嬉しさがあふれているように思えます。

山に目を向ければ、全体がほんの少し赤みを帯びてきた様に見えます。
新芽が競う様に出始め、その色が山を赤く染めているのかもしれません。
もう少しすれば、『山笑う』季節を迎えます。
今は差し詰め、くすっと微笑みはじめたところなのでしょうか。

故郷や どちらを見ても 山笑う  正岡子規

淡路市のあわじ花さじき公園では菜の花が満開です。
与謝蕪村の『菜の花や 月は東に日は西に』の世界が拡がります。

『朧月夜』  作詞:高野辰之 作曲:岡野 貞一
菜の花畠に入日薄れ
見わたす山の端霞ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて にほい淡し

菜の花畠を日暮れにみれば、朧月夜のようにうっすらと霞んで見えるのかもしれません。
春の日差しがさんさんと降り注ぐお日様の下では、
その鮮やかな黄色い絨毯は、
どこへでも飛んでいけそうなほど活力に満ちています。
一つ一つは、シンプルで可憐な花ですが、
集うことによって春を代表する明るく華やかな花となっているように思えます。

また、菜の花はアブラナ科のとても栄養価の高い緑黄色野菜です。
種子からは不飽和脂肪酸に富んだくせの無い菜種油が搾られます。
見て良し、食べて良し菜の花は、元気印満載の春の寵児と言えるのでは無いでしょうか。

南あわじ市八木 村上邸のしだれ梅は、今年もやはりみごとな春の緞帳を織り成しました。

その緞帳が今少しずつ上がります。
これからの淡路島には心浮き立つ春の舞台が次々に繰り広げられます。

この時期の食材には、冬の間に体内に蓄積した脂肪や老廃物を排出し活動的な体に目覚めさせる作用が多いとされます。

少しずつふくらんできた桜の蕾もその出番を前に緊張感でいっぱいです。
元気の源たちとの出会いを求めて、春の歌を口遊みながら、淡路島の春爛漫をお楽しみください。